佐賀地方裁判所 昭和56年(わ)67号 判決 1981年10月16日
本籍
佐賀県佐賀郡川副町大字早津江四八八番地
住居
同郡同町大字早津江八三番地
事業専従者
内川カネ
昭和一二年八月一日生
事件名
所得税法違反
出席検察官
馬場康吏
主文
被告人を懲役八月及び罰金八〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、内川勇が佐賀県佐賀郡川副町大字早津江津四八八番地で機械器具製造販売等を業として営む内川鉄工所の経理会計事務などに従事しているものであるが、右内川勇の業務に関し、所得税を免れようと企て、売上げの一部を除外し、それによって得た資金を簿外の預金として留保するなどの不正の行為により所得の一部を秘匿したうえ
第一 昭和五三年分の所得金額は二六三〇万二二六〇円であり、これに対する所得税額は九四三万一八〇〇円であるにもかかわらず、同五四年三月一三日、佐賀市堀川町一番五号所在の所轄佐賀税務署において、同税務署長に対し、同五三年分の所得金額が六一三万九五九七円でこれに対する所得税額が七五万七九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により所得税八六七万三九〇〇円を免れ
第二 昭和五四年分の所得金額は五六一五万四三五九円であり、これに対する所得税額は二七六四万五九〇〇円であるにもかかわらず、同五五年三月一五日、前記佐賀税務署において、同税務署長に対し、同五四年分の所得金額が七一八万七四六六円でこれに対する所得税額が一〇一万八七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により所得税二六六二万七二〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 証人内川利夫の当公判廷における供述
一 被告人及び内川勇連名の昭和五五年一〇月三〇日付上申書
一 被告人の大蔵事務官(質問てん末書。八通)及び検察官(二通)に対する各供述調書
一 被告人作成の「生命保険料等について」と題する書面
一 内川勇の大蔵事務官(質問てん末書。三通)及び検察官に対する各供述調書
一 内川利夫、井上ひとみ、久保弘、徳島一博の検察官に対する各供述調書
一 小宮亮(昭和五五年八月七日付)、野中広治(同年八月七日付)、鳴瀬益幸(同年九月二九日付で検察官証拠等関係カード60の分)、中原英雄(同年一〇月二八日付のもの五通、同年一一月六日付のもの二通、同年一一月一四日付のもの一通)、西村安太郎(同年一〇月二八日付のもの三通)、末永法生(同日付のもの二通)、山川譲(同日付のもの二通)、古賀秀毅(同日付)、山崎五郎(同日付)、福岡日出磨(同日付)、古賀平次(同日付)、築山佐一郎(同日付のもの二通)、鹿島智己(同日付のもの二通)作成の「証明書」と題する各各書面
一 金子登喜男(昭和五五年八月一一日付)、深川一(同年九月一〇日付)、大島国夫(同年九月一一日付)、深町金太(同年九月一二日付)、松田広喜(同日付)、浦井文雄(同年八月五日付)作成の各上申書
一 野口幾男(昭和五五年九月一二日付)、野口明(同年九月二五日付)、井上忠儀(同年九月一〇日付)、田島広(同年九月二五日付)作成の各申述書
一 田中博子作成の「五三年末の未払等について」と題する書面
一 鳴瀬益幸の大蔵事務官に対する昭和五五年九月二九日付供述調書(質問てん末書)
一 内川勇作成の「鍛冶業の収入について」及び「鍛冶業の仕入について」と題する各書面
一 大蔵事務官植木原良一作成の「鍛冶業の売上及び仕入について」「簿外仕入等について」「公表外の借入及び支払利息について」「利子所得及び雑所得について」と題する各書面
一 大蔵事務官戸伏仙之作成の「雑収入(戻り利息)の計上もれについて」及び「扶養控除額の増額について」と題する各書面
一 検察事務官陣内正則作成の電話聴取書
一 押収してある元帳(昭和五三年度分<1><2>、昭和五四年度分<1><2>)四綴(昭和五六年押第二六号の1ないし4)所得税源泉徴収簿一綴(同号の15)、資産負債関係書類一綴(同号の16)、領収証等一綴(同号の17)、脱水機売上ノート一冊(同号の18)、売上帳一綴(同号の22)、売買契約書三冊(同号の23)
判示第一の事実につき
一 江口直入(昭和五五年九月二九日付)、小川松次(同年八月五日付)、深川音三(同日付)、 島政月(同年八月六日付)、松尾利幸(同年八月七日付)、西村年夫(同年九月一〇日付)、大野義人(同年九月一一日付)、池田善次(同年九月二四日付)、古賀勝(同日付)作成の「証明書」と題する各書面
一 関与(昭和五五年九月二五日付)、古賀清幸(同年九月二六日付)、大淵吉春(同日付)、古賀四郎(同日付)、勝谷政典(同年八月五日付)、西村勝義(同年九月一〇日付)、山田達利(同日付)、三原義美(同日付)、中野秋男(同年九月一一日付)、井手良徳(同日付)、江口和磨(同日付)、古賀春次(同年九月一二日付)、渡辺久幸(同年九月二四日付)、森田輝行(同年九月二五日付)、小宮砂夫(同日付)作成の各申述書
一 馬場清晴(昭和五五年九月一〇日付)、角町香(同日付)、中島武男(同日付)、糸山勝利(同日付)、田中勇(同年九月一一日付)、黒田語(同年九月一二日付)作成の各上申書
一 竹下広重作成の「五三年末の未払について」と題する書面
一 北村文博作成の「脱水機等の取引について」と題する書面
一 今村慶子作成の「五三年末の未払について」と題する書面
一 坂井久三作成の「脱水機の取引について」と題する書面
一 真島勝郎作成の「五三年末の未払について」と題する書面
一 荒巻文男作成の「取引について」と題する書面
一 江頭定作成の「定期貯金受払い明細書」と題する書面
一 大蔵事務官植木原良一作成の「昭和五三年分の売上除外額について」「五三年分の売上高の過大計上について」と題する各書面
一 大蔵事務官戸伏仙之作成の脱税額計算書(自昭和五三年一月一日至昭和五三年一二月三一日)及び昭和五三年分脱税額計算書説明資料
一 押収してある仕入帳(昭和五三年度)一綴(昭和五六年押第二六号の5)、個人売上、漁協、企業売上各社仕入(昭和五三年度)一綴(同号の7)、漁協、商社売上帳(昭和五三年度)一綴(同号の8)、領収証控一冊(同号の12)、個人売上(昭和五三年度)一綴(同号の13)、請求書一通(同号の34)、請求書・領収証二綴(同号の35、36)、領収証・請求書二枚(同号の37)、請求書・領収証一綴(同号の38)、昭和五三年度分所得税青色申告決算書一綴(同号の39)、昭和五三年度分所得税の確定申告書一綴(同号の41)
判示第二の事実につき
一 勝谷政典(昭和五五年八月七日付)、鳴瀬益幸(同年九月二九日付で検察官証拠等関係カード61の分)、江頭定(同年一〇月二八日付)作成の「証明書」と題する各書面
一 岡本清(昭和五五年九月三日付)、小宮功(同年八月四日付)、田中則夫(同年八月五日付)作成の各上申書
一 田中則夫の大蔵事務官に対する昭和五五年八月五日付供述調書(質問てん末書)
一 長崎地方貯金局長作成の「定額郵便貯金の払戻状況の照会書について(回答)」と題する書面
一 大蔵事務官戸伏仙之作成の「昭和五四年分の売上除外額について」と題する書面
一 大蔵事務官植木原良一作成の「五四年分の売上高の過大計上について」、「五四年に取得した土地建物について」、「簿外外注費及び前渡金について」と題する各書面
一 大蔵事務官戸伏仙之作成の脱税額計算書(自昭和五四年一月一日至昭和五四年一二月三一日)及び昭和五四年分脱税額計算書説明資料
一 押収してある仕入帳(昭和五四年度)一綴(昭和五六年押第二六号の6)、個人売上、漁協、商社売上各社仕入(昭和五四年度)一綴(同号の9)、漁協、商社売上帳(昭和五四年度)一綴(同号の10)、領収証控一冊(同号の11)、個人売上(昭和五四年度)一綴(同号の14)、売上帳三冊(同号の19、20、21)、請求書一七冊(同号の24)、領収証控一五冊(同号の25、26、27)、請求書一綴(同号の28)、納品書控二冊(同号の29)、納品書三冊(同号の30)、納品書兼送り状一冊(同号の31)、領収証二冊(同号の32)、売買契約書(店頭用)一冊(同号の33)、昭和五四年度分所得税青色申告決算書一綴(同号の40)、昭和五四年度分所得税の確定申告書一綴(同号の42)
(法令の適用)
判示各所為につき
所得税法二四四条一項、二三八条(併科する)
併合罪加重
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項
労役場留置
刑法一八条
刑の執行猶予
刑法二五条一項(懲役刑につき)
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 寺坂博)